4月のサンガクシャ

連翹の花が咲きました。
下落合の祖父の家の近くに、
門口に連翹のある家がありました。
花ざかりには、あたり一面が金色に輝きました。
家の主は生物学者で、居間の出窓に
原稿用紙を綴じた詩集が置かれていました。

ー連翹が門に黄色い小旗をたてたー

背の高い夫人は二人兄妹のヴァイオリン合奏を伴奏したり、
壷の水あめを割り箸にくるくる巻いて、
「はい、おやつ」と配ったりしました。
父を早く失い、母の実家で暮らしていた私には
その家は幸福そのものにみえ、自分の家にも
いつか連翹を植えたいと思うようになりました。
のちに連翹の家は一度ならず不幸に襲われて
私は人の幸せの儚さを思い知らされましたが、
それでも引っ越すたびに、どこかに連翹の苗を植えています。


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