木村葉山先生追悼 脇起半歌仙 秋出水の巻

柴門連句会捌

〔捌番〕
閻魔無事奪衣婆受難秋出水形型子
 月夜に釜を抜く世相にて新吾南雄
猪垣をめぐりまわして峡〔かひ〕の村明子新吾
 しじまに響くチェーンソーの音梨枝子美穂子
連載は間に合はないとテレックス新吾久子
 本棚にある葉巻のかをり時子たづ
大雪に滑走路閉ぢ日の暮るるたづ時子
 北狐みて旅も終りに好子梨枝子
君の胸飾らむと買ふペンダント佳子じゅん
 恋を詠みても恋に縁なく美穂子純子
甘酒を酌みては苦吟極まりて祐子
 涼やかに吹く八ツ岳の山風愛子
優曇華のかすかに揺るる月あかり純子昌亮
 体温表に一喜一憂佳子
わが庵は家族計画三年目南雄紀伊子
 狆の顔した柴犬産まれたづ睦美
爛漫の花に行き交ふ段葛久子
 入学式の学長の笑み潤子禮子
昭和六十三年 八月 八日 首
於 甲斐大泉賛岳舎
昭和六十三年 十月十九日 尾
於 大岡山三楽舎

柴門連句会 柴田南雄の遺したもの サンガクシャ